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CHAPTER2 主語S以外のものが主題になる場合  SECTION2-3

  •  M2 V S の語順
  •  C V S の語順

 

a) M2  V S の語順

副詞要素M2の後にS Vとくるのは前にも話しました。

 

 

今日は先に動詞Vが来て主語Sが続く場合を取り上げ、それがどのような情報構造上の違いをもたらすのか考えたいと思うのです。

①At stake, then, is how this "contingency" is theorized, a difficult matter in any case for a theory that would account for "contingency" will doubtless also always be formulated through and against that contingency. ②Indeed, can there be a theory of "contingency" that is not compelled to refuse or cover over that which it seeks to explain? 

(意訳)

① そこで重大なのは、この‟偶然性”がいかに理論化されるかということだ。‟偶然性”を説明する理論にとって難題はいかなる場合も、まちがいなくそしていつもその偶然を通過そして対抗して公式化される。②たしかに、それが説明しようとする事柄を拒絶したり隠蔽することを強要されない‟偶然性”についての理論などありえるのだろうか?あるわけがない。

 

①のように副詞要素M2が先頭にあって後ろにVが続く場合の動詞は存在・発生の意味の自動詞かまたは存在・発生の意味になる受動態(自動詞に相当するもの)のどちらかになります。 isは存在を示す自動詞で、他動詞の受動態で存在・発生の意味になるのは be foundやbe presentedやbe set などがあります。動詞の特徴は意味が希薄ということに尽きます。それ故、意味の豊かなM2とSの間にあって、天秤の支点のように両者の釣り合いをとっているのでOSVの主題ほど目立つことはありません。

    

     存在・発生を示す自動詞およびそれに相当する受動態

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  M2 V  Sの語順の情報構造

 先頭にある副詞要素M2は旧情報GivenAであり、、主語Sの方が新情報Aとなります。①は、これより前のセンテンスの流れがあってAt  stake「重要なのは」はそれを受けています。ここでは紙面上詳しく解説は致しませんが前のセンテンスとこうです。

In this sense, the failure of any ideological formation to establish itself as necessary is part of its democratic premise, the ungrounded "ground" of the political signifier as a site of rearticulation.

このパターンは旧情報を前提として新情報を導入する役割を担っています。

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  ①での新情報に相当するSは疑問詞で始まる名詞節how this "contingency" is theorized「いかにしてこの”偶然性”が理論化されるのか」でありますが、この疑問詞howも新たな展開を導くための目印であることがわかりますよね。

 

 ところで、この後のコンマですが文法構造上は等位接続詞なしでセンテンスとセンテンスをつないでいます。なぜならそれらは依存することなく構造上成立しているからです。コンマの前は

   At stake, then, is [how this "contingency" is theorized]

            M2          M2   V   S

 名詞節は形容詞節や副詞節と違ってそれ自体で、センテンス全体のなかのS、OあるいはCの機能を持ちますからね。語順の変わった第2文型SVCです。その後も、センテンスとして成立しています。

a difficult matter in any case for a theory (that would account for "contingency") will

  S                     M1                 M1           S'             V'                 M2'

doubtless also always be formulated through and against that contingency. 

              V                                                               M2

  a difficult matterはS、in any caseとfor a theoryは主語Sにかかる形容詞句、( )ないはa theoryを先行詞とする形容詞節(関係代名詞節)でその内部は上に記したように第1文型SVと副詞句がある。動詞群は副詞も含んでいるが助動詞willと受動態で成っている。その後ろは副詞句で動詞群Vにかかっているわけです。

 このようにコンマが接続詞の役目をはたしているので構造を捉えるのは難しかったと思います。

 

 

b)  C V S の語順

これも情報構造上は、M2 V Sの語順と同じです。

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それでは例文をみてみましょう。

Doubtlessly crucial is the  ability to wield the signs of subordinated idenity in a public domain that constitutes its own homophobic and racist hegemonies through the erasure or domestication of culturally and politically constituted identities.

(意訳)まちがいなく重要なのはある公の領域に所属した同一性の記号を武器として扱う能力だが、それは 文化的そして政治的に構築した実体が排除または支配することでそれ自体の同性愛嫌悪と人種的ヘゲモニーを構築する。 

 ジュディス・バトラージェンダー論[BODIES THAT MATTER] から取り上げたものですが、これは前後関係も捉えない限り理解は難しいでしょうね。私の理解は「男」「女」という本来記号にすぎない名詞を、文化・政治がそれを実体化しマイノリティを排除するということです。こういう議論を教室などで行えば授業は活性化すると思われるのですが。

 

 ところで初めの記事にも書きましたが情報構造を把握するのに大切なのは文と文ではなく節と節の関係だといいました。

 

kenji-tokuda902.hateblo.jp

 だからこの文も形容詞節(関係代名詞節)だからといってthat以下を丸ごと先行詞にかけてしまえばまず理解不可能になるでしょう。関係代名詞は接続詞+代名詞なのです。論理展開は

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 ということをお忘れなく。ただしここではノーマル度が低いゆえに末尾がSになっていますが。最後に3つの旧情報のうち頻度の少ないGivenC(状況内で与えられているもの)の例文だけ挙げて終わりにします。

 So angry was he that he could barely control himself.

 Such was his anger that he could barely control himself.