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CHAPTER3 受動態・There is構文・「強調構文」  SECTION3-3

 強調構文を取り上げましょう。この構文はいつでも自由に使えるというものではありません。何らかの必然によって表現されるものなのです。3つのパターンに分類して説明します。

 

  1.  It is の後に名詞要素があるパターン
  2.  It is の後ろに副詞要素があるパターン
  3.  What~ is ...「~なのは・・である」というパターン(文法の専門書ではこれも強調構文の一種。強調構文が分裂文と呼ばれるのに対しこれは疑似分裂文と呼ばれる 。)  

 

1.It is の後ろに名詞要素があるパターン

 a) 強調構文の構造

 Itが「形式主語」の場合つまり後ろのthat節を受ける場合これは「強調構文」といえない。後ろのthat節は名詞節でセンテンスとしては完結しています。それに対し「強調構文」はthat節以下は関係節です。構造としては本来一つの節であったものを二つの節に分けて表現されることになるのです。

 

  You are to blame for the failure. (その失敗の責任を問われて当然なのは君だ)

 

 という節をもとにふたつの節が作れます。

  

  It is you that are to blame for failure.

       It is for failure that you are to blame.

 

 b)この構造の意義

 他の節パターンを選ぶと主題選択と情報構造に問題が生じるためです。主題には「他ならぬ」という意味が加わります。It isのbe動詞には主題と題術のあいだに1対1の呼応関係を設定するからです。

 

 情報構造としてはIt isの後ろに新情報NewAがある時はthat以下は旧情報Given AとなりNew Aを今後の発展の土台とみましょう。It is の後ろに旧情報Given Aがある場合that以下はNewBとなりすでに提示された事柄を一つにまとめて要約したものと考えられます。もういちど基本的な情報構造をおさらいしておきます。

 

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kenji-tokuda902.hateblo.jp

 

 

そのうえで読解あるいは英作文で「強調構文」の特性・意義を活かしましょう。

 

cf)  参考までに主題がnot A but Bは「Aではなく」の部分が「他ならぬ」の他を明示しているわけです。その婉曲表現に

 not so much A as B/ less A than B/ rather B than A

も「強調構文」と非常に相性がいいのです。

 

2.It is の後ろに副詞要素があるパターン

 副詞要素M2がIt is によって主題化されるのはコントラストが生じるのを防ぎ「他ならぬ」という意味を加えたいという動機があります。 だから、条件、譲歩がここにくることはありえません。それは「他ならぬ」にマッチしないからです。

 

 ここでも名詞要素の場合と同様に、It is <新情報New>that<旧情報Given>のパターンとIt is <旧情報Given>that<新情報New>のパターンはあります。それについては後に取り上げる例文で検証してみます。

 

3.What~ is ...「~なのは・・である」というパターン

これは、上の目次のところで括弧をつけて疑似分裂文といいました。

 

 What ...is 名詞要素.

と逆パターン

 名詞要素 is what...

がありますが両者ともwhat節という名詞要素と他の名詞要素とを1対1に対応させる点で「強調構文」と同様「他ならぬ」の意味が生じます。違いはというと節のどの部分でも主題化して節の先頭に置くことができるということにあります。

 

ex) James offered Mary a beer.

 

          What James offered Mary was a beer.

 

         The one who offered Mary a beer was James.(Whoではめいしせつをみちびくこ             とはできないのでthe one whoにしました)

 

   What James did was offer Marry a beer. (何をしたかを主題とすれば                     offer a beer というVOOをwasの後に持っていくこともできます)

          

          What happen was that James offered Mary a beer.

   (「何があったか」も主題になりえます)

 

 さらに、押さえておくべきは、what節が前提でbe動詞より後ろが主張になるということです。情報構造は旧情報Given⇒新情報Newとなります。

 

 

では、この疑似分裂文を含めた「強調構文」が豊富にある例文をあげてみます。

 

①What is overlooked in the return to Nietzsche initiated by poststructualism is Nietzsche's internalized romanticist disposition; it is from this reconsideration that we are today reinterpreting him.② In opposition to reason, romantisists regard as essential the manifold and contingency- immanent in concepts like body, effect, feeling, and the like. ③But it is only reason itself  that can deconstruct reason.④ It is my contention that without a formal procedure or method, all cretique directed at the will to architecture, no matter how obsessively repeated, will invariably devolve into romanticism.

                                [...]

⑤Thus it is in mathematics that the Platonic will to architecture is most often encountered, and , accordingly, it is through mathematics that the critique of Plato must be focused.  

 

(意訳)①ポスト構造主義者によって始められたニーチェへの回帰において見落とされているのはニーチェが内面化したロマン主義的配置だ。いうなればこの再考から今日わたしたちは彼を再解釈している。②理に対し、ロマン主義者は身体、印象、感覚などの概念に内在する多様性と偶然性を本質とみなす。③しかし、理性そのものしか理性を脱構築することはできない。④公式な手続きあるいは方法がなければ建築への意志へ向けられる批判は、どれほど脅迫的に繰り返されようともすべて不可避的にロマン主義に吸収されてしまうであろうというのが私の持論だ。(中略) ⑤こうして数学においてこそプラトンの建築への意志はもっともよく見出され、したがって数学を通してこそプラトン批判に焦点を当てねばならない。

 

 

 

 これまでに取り上げた英文の中でも相当読み応えあると思いませんか。

 

まず①は疑似分裂文。What節は前提、旧情報Givenですが「ポスト構造主義者が始めたニーチェ回帰において見落とされたもの」が多くの人に知られている価値の低い情報とは言えませんね。これはGivenAで文章ですでにのべられている事柄なのです。この引用文より前のパラグラフで述べられたセンテンスには

 

 Nietzsche established the prototypical critique of Platonism, but Nietzsche's critique overlooked something.

 

 があります。それでis以降が新情報Aで新たな展開となりそれは「ニーチェロマン主義の立場を内面化した」ということになる。

 セミコロンはいいかえをあらわします。そしてここでは副詞要素M2が強調されます。「(他ならぬ)この再考から」というIt is の後に来る部分が強調される旧情報となって、新情報へとつなげる。ただしこの新情報はNewBで述べるのは二度目であるが情報価値は高い(もう一度上のリストで再確認しておいてください)。

 

②は副詞要素M2が主題となります。この情報構造は以前にも述べておきました。

 

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 ③ではまたしても強調構文です。主題はIt is 以降の only reason itself 「理性そのもののみ」でこのonlyが「他ならぬ」に非常にフィットする。情報構造は

 旧情報GivenA → 新情報NewA

という形をとります。

 

 ④は要注意です!これは「強調構文」ではありません。that節以降の構造を検証してもらえればお分かりになると思います。先頭に副詞要素M2がきてその後主節が続くのですが節としての副詞要素M2がさらに挿入されています。主節は第3文型SVOで完結されていますのでIt isの後ろにあるmy contentionが先行詞として入る余地はありません。このItは形式主語でthat節を受けmy contentionは補語になるのです。

 

 ⑤またまた「強調構文」Thusは省略されていますが前パラグラフをまとめます。接続詞andで二つのセンテンスを結んでいます。いずれの情報構造も

 

  旧情報GivenA → 新情報A

ですが、これらは

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 という展開であることに留意しましょう。

 

 

 

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