英文を読む

楽しくスリリングな読解を心がけてます

CHAPTER1主題・主語の情報構造  SECTION1-3

受験勉強と社会とのつながり

 英文の読解では、まずセンテンスの構造を捉える必要があるのは確かですが、果たしてそれだけで内容理解に至るのでしょうか?大学受験では、たとえ優れた文章が出題されたとしても内容理解に至ることなくテクニカルな見事な和訳で合格する人もいることでしょう。私の現役時代はまあ多くの受験生が燃え尽き症候群に陥り、18歳で勉強をやめる国ができあがってしまったのですが。文系は英語のウェイトが大きかったですから、書経験のないまま大学、社会へのパスポートを手に入れられたのです。その後、社会人はどういう人生を送ることになるのか?世界の中で日本はどういう位置にいられるのか?みなさんにぜひ想像してほしいです。

 

 とにかく、大学の受験勉強では優れた書物に度々であっているのです。ほんとうにそれらを読めていれば大学に入ろうが、入れなかろうが18歳で勉強をやめる国になってはいない。駿台予備校の表三郎先生は参考書とは別売のカセット(今はもうない)の中で言っておられます。

 

「まるでゲームの腕を磨くかのように勉強してはいけない。反対に勉強嫌さに本ばかり読む人もいるが、僕はどちらを選ぶかといえば大学はいれなくとも本ばかり読んでる生徒ですね。人生は長いのですから。」

 

スーパー英文読解法 上

スーパー英文読解法 上

 

 

 

 

 

 受験のノウハウを教える<プロ教師>が言ったこととは思えませんね。表さんは入学後の先を見ておられるわけです。そのためにも正統な学習、つまりテクストの内容理解を目指しましょう。入学だけが目的ではないのでサラリーマンの方々にも参考にしてほしいものです。前置きはそこまでにして、今日の本題に入りましょう。

 

情報構造と主題

 構文を捉えた後にしなければならないのが、この情報構造を掴むことです。情報として価値ある一つの単位を情報単位(主に節)と呼びます。この中には新情報Newが少なくとも一つはないといけないのです。そうでないと読み手にとって価値はないからです。それ以外の部分を旧情報Givenといいます。

 

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ただし、新しいか古いかだけで新情報か旧情報が決まるわけではありません。それぞれ次の3つのいずれかに当てはまるかどうかで決定するのです。

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 NewBは読み手に取って一度目に述べた時とは違った価値が生まれていると書き手が判断した時に生じる。そうでなければ一度述べたことはすべて価値がないことになりますよね。そんなことはありえません。NewCは初めてかどうか関係なくコントラストをなす場合、その要素は新情報となります。この場合New→Givenの流れになるのです。

 

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 GivenBにはレベルの高い文芸評論、哲学書なら一般人にとって新情報であっても旧情報という前提で進めていくことがある。これからは情報格差が露骨に表れる時代が来るので多くの情報を取りに行かねばなりませんね。

 

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まとめ

書き言葉の情報構造はGiven→Newが基本である。Given/Newの区別は、すでに述べられたものであるかどうかではなく、読み手にとっての情報価値の高低についての書き手の判断によって決まる。リーディングの際には、情報焦点のある節の後半あるいは末尾の情報を、読み手である自分にとって情報価値の高い情報とみなそう。

   『英文読解のグラマティカ』 富士哲也

 

英文読解のグラマティカ

英文読解のグラマティカ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

CHAPTER1主題・主語の情報構造  SECTION1-2

接続語句と法副詞が主題の位置にフィットする場合

 接続語句というのは等位接続語and/ but/ or/ forなどですよね。それではあまり耳慣れない言葉ですが法副詞とは何でしょう?

 

 端的に言うと書き手の判断の強弱だといってよいでしょう。

  • 可能性を示すものなら

  certainly  強   probably  中  perhaps 弱

  • 頻度を示すものは

  always 強   usually 中   sometimes 弱

という具合です。

 

そのほかに連結副詞も重要です。

これは接続詞とどう違うのでしょう?

 

 接続詞は節と節を結ぶ場合は必ず節の先頭に置かなければならないルールがあります。それに対して連結副詞は接続語と違ってほかの位置に置くこともできます。なぜなら副詞ですから。またAndのあとにコンマ、が来ることはないが先頭に連結副詞が来ればコンマが入る場合が多いことも知っておきましょう。ただし節と節との関係を示すという点では同じです。節の内側に来ても文脈が今後どういう展開に向かうのかは押さえておかねばなりません!

 

 in other word 「いいかえれば」in fact「事実、」     反復

 however「しかしながら」               方向転換

 instead「そのかわり」                 代替

他にもありますがこれらは典型ですね。 

 

それではテクストに入りましょう!

Marxists were aware of a stastic concept of Bonapartism, and even overused it, but they never tried to see the dynamic process wherby Bonapartism emerged from the representative system. ②Instead, they appended various scholarly disciplines such as sociology   and anthropology to their analysis.③ What remained lacking, however, was any consideration of how the state exists and  what kind of repetition compulsion it has. ④ For this reason, they failed to grasp the essential point and were unusable to offer an insight into subsequent phenomena. 

(意訳)

マルクス主義者はボナパリズムの基礎概念は知っていたし、それを乱用さえしていた。しかし彼らはボナパリズムが議会制度から現れるダイナミックな過程を全く見ようとはしなかった。②代わりに、社会学文化人類学のような多様な学説を自分たちの分析に加えたにすぎなかったのだ。

③しかしながら、足りないままになっているのはどのように国家が存在し,それがどんな形の反復強制を持っているのかという考察であった。④このため彼らは本質となる点を理解できず、そこからくる現象を洞察できなかったのだ。

 ①の接続詞butは話を変える働き、②~④の太字は連結副詞でInsteadは①に対する代替の働き、howeverは話題転換、For this reasonは理由づけです。

 

このパラグラフに続くのはこうです。

 ⑤Clearly, the form of government in 1930s Japan differed from the type of fascism seen in Italy or Germany. ⑥There can be no fascism that worships a king.

(意訳)

⑤明らかに1930年代の日本の政治形態はイタリアやドイツで見られたファシズムの形態とは違っていた。⑥一人の王を崇拝するファシズムはありえなかったのだ。

 Clearlyは強い可能性、つまり確信を示す法副詞です。上のパラグラフで言及してきたことから以下の内容は断言できるものとなったのです。

 

まとめ

今後の話の方向性を示す接続語句、あるいは書き手の判断の強弱を示す法副詞が主題である場合には、主語Sがしめす内容上の主題に加えて、接続語句・法副詞も主題の一部とみなそう。そしてそれらが伝える情報を念頭に置きながら読み進めるようにしよう。 

 

CHAPTER1主題・主語の情報構造  SECTION1-1

主題としての主語S

 まず、節における語順とそのメッセージ・特長を押さえておこう。

 

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 この図は英論文を読み解くうえでかなり重要なのです。自然に身につくまで事あるごとに戻って確認するのもよいでしょう。 

 

 まず、主題というのはすべて節の先頭におかれる。ただし主語Sがいつもそこに置かれるとは限りません。今日は最もノーマルなパターンとして主語Sのみが主題の場合を考えましょう。因みに主題は節の前半、術題は節の後半にくるものとします。

 

 ①Philosophers since Plato have returned over and again to architectual figures  and metaphors as a way of grounding and stabilizing their otherwise unstable philosophical systems. ②Descartes developed the metaphor of the city planner as a model for producing a solid edifice of thought, while Hegel believed that knowledge must be systematic, architectonic.  ③Even Kierkegaard, despite his parable ridiculing Hegel for living in a hut overshadowed by a magnificient edifice of Hegels own construction, availed himself of the metaphor of architecture.   

 

(意訳)①プラトン以来の哲学者は繰り返し何度も構築の概念と隠喩に立ち返っては自分たちの不安定な哲学体系を根拠づけ安定化させようとしてきた。②デカルトは都市計画の隠喩を思想の強固な建造物を構築するためのモデルとして展開したし、ヘーゲルは知は体系的、建築的でなければならないと信じていた。③ヘーゲルは自分自身の構築物である壮大な建物によって影に入ってしまった小屋の中に生きていると寓話を用いて嘲笑したキルケゴールでさえ、建築の隠喩を用いているのだ。

 

 ③だけ主語に法副詞(これについてはのちに詳しく触れます)Evenがついているのですが「~でさえ」という意味ゆえに①②に対して新たな展開があるわけではないのです。いってみれば①~③はすべて言い換えといえるのです。 接続語句もなく、指示語も語句の反復もなく主題が主語Sであるというパターンは言いかえの目印なのです(節は主題=文頭 ⇒術題=文末という流れを持つ)。前の説の内容から一歩も前進しないのです。つまり、

 

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 という構成です。

 

   これにたいして、次の例文はどうでしょう?

Communication is usually understood as a model in which an ideal speaker and an ideal listener change messages by means of a common code. ②This model is isomorphic to the model of classical and neoclassical economics. ③The equilibrium theory of classical economics, especially that of Vilfredo Pareto, could not have been very far from Saussure's thoughts when he produced his synchronic system.  

(意訳)

①コミュニケーションはふつう理想の話し手と理想の聞き手共通のコードを使って意見交換をするモデルと考えられている。②このモデルは古典派、新古典派経済学の均衡理論と同型だ。③古典派経済学の均衡理論、特にヴィルフレッド=パレートのそれは共時体系を創ったときのソシュールの思考とはそれほどかけ離れてはいなかったであろう。

 ①~③ すべてが上の例文と同じで主語Sが主題であるが、②のThis modelは①の主節にある副詞句内のa modelを受けている。③のThe equilibirium theory of classical economicsは②の文末にあるthe classical and neoclassical economicsを受けているのです。ついでですが英文は文と文ではなく節と節の関係でとらえないといけないといいました。すると①は主節と形容詞節(関係代名詞節)との関係で形容詞節の頭にくる副詞句in which のwhichは主節の後ろのa model を受け ③は主節と副詞節の関係で副詞節の頭heは主節の後ろにあるSaussureを受けているのです。

 

 パラグラフの構成は

 

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 という具合ですね。

 

まとめ

 節の先頭=主題が主語Sである場合には、書き手のメッセージは、「この節のテーマは~です」というメッセージに限られる。そして主語Sにおける指示語・語彙の反復の有無は、節と節が言い換えの関係にあるのか、あるいは話が一歩前進するのかを見分ける大切な目印となる。

 

 

スーパー英文法 PartⅠ

 PartⅠで取り上げるのは主題選択と情報構造についてです。読むことにおいて念頭に置くべきは文(sentence)ではなく節(clause)である。その理由を知るためには次の2文を検証してほしい。

① Buddhism, which is said to have entered Japan in the sixth century, was established as a atate religion in the seventh and eighth centuries because Yamato court, which at the time have achieved unification through the conquest of disparate clans, made use of it as a world religion that would transcend the gods of the multiple clans. ② For this reason, it was at the time no more than an esoteric religion centered on the pacification and protection of the realm by way of  proyer and ritual[chingo kokka].    

① 仏教は6世紀に日本に入ってきたといわれているのだが7世紀と8世紀に国家宗教として制度化された。そのわけはヤマト朝廷は当時分散した氏族を征服し、それを多様な氏族の神を超越する世界宗教として利用することにあった。② だから当時それは鎮護国家の中心に置かれた秘奥の宗教にすぎなかったのだ。 

  ①と②はどのような関係にあるのでしょうか。センテンスを単位にしてしまうと①の全体と②の全体を関係づけようとしてしまいます。ところが①の主節は導入であり前提なのです。「仏教が6世紀に入り7,8世紀に国教となった」はたいてい歴史の教科書に載っていますよね。

 ところがbecause以下の副詞節は筆者の見解であり、多くの読者に認知されていない情報なのです。②の代名詞thisは①の副詞節の内容を指しセンテンス全体は副詞節以下をさらに展開するのです。「神々を超越する世界宗教がたんなる秘奥の宗教」と言い切るのに仏教が6世紀に入り7,8世紀に国教となった」はあまり関係がないですよね。

 

 このPartⅠのキーコンセプトは節の主題のノーマル度です。書かれた英語では、主語が節の先頭にあるときが最もノーマルです。主語以外のもの(副詞要素M2や目的語Oや補語Cなど)が置かれる主語が主題となっている場合に比べノーマル度にかけるのです。

 ただし、副詞要素M2は比較的ノーマルとみてよいでしょう。それが節の先頭に出てくることは多いからです。そして最もノーマルさに欠けるのは目的語Oなのです。以下、富士哲也氏の『英文読解のグラマティカ』を構成する

  •   CHAPTER1 主題・主語と情報構造
  •   CHAPTER2 主語以外のものが主題になる場合
  •   CHAPTER3 受動態・There is構文・「強調構文」   

をフレームにPartⅠを解説していこうと思います。